第12話 スクープではないスクープと総理の辞任(2)
中国の民主化や健全な発展を思うと、対岸の火事と傍観は出来ないな。「温家宝総理よ、もう少し頑張れ!加油!」と応援をしたくなる。
私は参議院選前日の7月28日に中国要人避暑地で有名な、北京から300kmほど東の河北省北戴河に居た。北戴河で第17大人事のトップ交渉が行われるのは、周知の事実である。
雨上がりの夜半に北戴河の浜辺の小屋で、中央本部の共青団や地元の幹部と「江沢民は既に当地に入っているから、そろそろ胡主席も合流して」などと、砂の混じった茹で貝やシャコの肴とビールで深夜まで話し込んだ。遼東湾から静かに打ち寄せる波頭が、暗闇の磯で少しだけ白く砕けていた。
帰国前の北京で、共同通信S記者と久し振りの再会だが、記事の反響の大きさにまだ戸惑って居るようだ。「実はあの記事のせいで、配信先の各新聞社のリーダー達の訪中日程(要人会見など)が当局からキャンセルになり、上司や各社に迷惑をかけてしまいホント参りましたよ」とぼやいた。それはそうだろう、記者とは言え組織人だ。
実は後で知ったのだが、彼がメインライターになり新進気鋭の記者達が、配信、連載してきた「興竜の実像」が「中国に生きる」(共同通信取材班)として上梓されたばかりだった。彼の眼力や立ち位置の一端が窺える書籍なので「あとがき」を写す。
「政治的にも経済的にも存在感を増すばかりの中国に関する情報は、私たちの周りにあふれている。ただ、その多くがいわゆる「脅威論」や情緒的な親中、反中、嫌中などの言説に取り込まれていないだろうか。論はぶたない。あらゆる先入観を排し、現場に足を運び、人を描く・・・」と。
話を戻す。S記者のボヤキを聞いて、プータローのような私は、敬意を表すつもりが、激励染みた話になってしまった。以下その要約。(でも長いな)
最重要機密の人事報道は、手を抜いても記事になるような、権力闘争オンリーの取材がほとんどだから、今回の報道はとても新鮮だ。温総理の「後5年なんてとても持たない」と言う情報を重大だと日本のマスコミが感じたのもイイカンジだ。
中国は信頼される大国になれるか、それとも腐敗潰しのもぐら叩きの明け暮れと、格差社会の蔓延で13億の民が「馬糞の川流れ」のように、テンデンバラバラと消え行く瀬戸際だ。中国の民主化や健全な発展を思うと、対岸の火事と傍観は出来ないな。「温家宝総理よ、もう少し頑張れ!加油!」と応援をしたくなる。だから、貴兄の記事の本質をまともな中国人は解るだろう。と大見得を切った。
それで止めればいいものを、「各社に迷惑をかけてしまい」と言うけど、信濃毎日や琉球新報など加盟各社は、なりは小さくとも其れなりの見識がある。地域の読者から、オマンマと信頼を頂いているのだから、中国で本気の取材だと応援してくれるさ、と無責任な事を言ってしまいましたよ。
既存メディアの新聞やテレビなどは、時間と表現スペースに限りがある。S記者だってブログならば、詳しくスクープの背景を書いた筈だ。厳しい制約の中での取材や表現は困難が伴うが、まあ、それで光るのがプロだろう。
S記者たちとは違い、締め切りや文字数にも囚われず、戦線から遠く離れ責任も無く御託を長々と並べる、新米ブロガーのオッサンとしてはちょっとばかり恥ずかしい。
さて、今日は中秋の名月だ、未明に雨が降ったが予報では晴れそうだ。そろそろ出社しないと遅刻だ。でも月に叢雲、花に嵐の譬えで人生一寸先は闇だから、お神酒だけは確保して・・・
(完)
