第16話 米中艦隊ご一行様の入港(3)
両岸の波高い台湾海峡をぬけて、国威国益が渦巻く東シナ海尖閣諸島のガス田海域を威風堂々と、白波を蹴立てて富士山の映える相模湾を目指していた。
香港で七面鳥を食べ損ねた空母キティホーク艦隊は、母港に向けて舳先を返した。むくれるのも無理はない、半世紀も現役を続けた最古参の艦船で来年は退役の予定だ。
キティちゃんにとって感謝祭は退職慰労会のようなものだろう。(2)で書いたように中国は翌22日に入港拒否を撤回したが、時は既に遅し。キティちゃんは香港の沖合いを離れ、南シナ海の東沙諸島付近を北東に進路をとり、バーシー海峡から太平洋へ出て南西諸島に沿って相模湾へ向う航路を取った。
一方、21日午後に出帆した中国ミサイル駆逐艦「深セン」君も、22日午後は湛江港から南東700kmほどの東沙諸島付近を、巡航速度で南シナ海を日本に向けて航行していた。なんの因果か東沙諸島で、がっくりと肩を落としたキティ艦隊を捕捉した。
台湾の南、バーシー海峡に向うのを見届けて、両岸の波高い台湾海峡に進路を取った。そのまま、国威国益が渦巻く東シナ海尖閣諸島ガス田海域で、ラインギリギリの友軍を鼓舞しながら、威風堂々と白波を蹴立てて富士山の映える相模湾を目指した。
両艦は奄美大島付近の太平洋で再び接近した。「深セン」は識別番号と同じ167海里(300km)ほど後ろから追尾をはじめた。遠州灘沖でキティが浦賀水道に入り、第3海堡に達したのをレーダーで確認して、ゆっくりと寄港体制に入った。・・・ここまではオッサンの妄想、想像だ。
携帯が鳴った。「オマエの言う通り横須賀の米海軍基地から、今日15時20分に空母キティホークが戻ったと、防衛省に連絡が入った。」と友人が教えてくれた。これで今夜は友人に、七面鳥の替りに新橋辺りのヤキトリ屋で奢ってもらえるぞ。いや、何の権限も情報もない奴だけど、国を憂いて職務に励んでいるようだから、オッサンがせめてホッピーの接待漬けでもしてやろう。
さて、明日の朝はいよいよ中国人民解放軍、肖新年少将を乗せたミサイル駆逐艦「深セン」が東京湾の最深部、晴海埠頭に入港だ。そう言えば今週には防衛省の大将格が、特捜部にミサイルをぶち込まれそうだとマスコミが騒いでいたな。明日は止めてよ、特捜さん。落語やブログのオチにもならないからな。
(続く)
