第16話 米中艦隊ご一行様の入港(4)

2007.11.28

海自はどう防衛するのかと見ていたが、指揮棒が振り下ろされたのに号砲が聞こえない。思わず固唾を呑んで辺りは静寂に包まれた。すると、かすかに聞えてきた

 10時前に海上自衛隊の護衛艦「いかずち」に続き、明るいブルーグレイの中国南洋艦隊所属のミサイル駆逐艦「深セン」が着岸した。おそらく「いかずち」はホストシップだろうから、所属する第一護衛隊群の母港横須賀からエスコートして来たのだろう。両艦とも性能はともかく、ミサイルはもちろん艦尾の搭載ヘリや、舷側の短魚雷など機能が似ている艦船だ。

 憲法の建前上日本の艦船には、軍隊をイメージさせる戦艦や駆逐艦、巡洋艦などの呼称は付けていない。こうゆう事に目くじら立てるオバカナ知識人がいるからな。水上特攻自爆艇「震洋」人間魚雷「回天」なんというのは、もっての他だけど何かセコイよな。輸送艦もだめだから補給艦なのかな? 不愉快に成って来たから、もう艦船について書くのは止めた。

 歓迎式は吉川海上自衛隊幕僚長など一連の挨拶の後、軍楽隊(日本は音楽隊)の演奏が始まった。「深セン」は親善訪問を数多く経験している、中国海軍のトップクラス外交艦だ。外交官ではないよ。演奏も半端じゃない。そうそう、中国には人民解放軍のTVチャンネルがあり、いつも紅白をやっているんだ。エリート街道を走っている青年や高級幹部の子弟の中には、結構ミメ麗しい歌手を嫁さんにしている。オットまた脱線しそうだ。

 南海艦隊軍楽隊が「軽騎兵」をやれば自衛隊横須賀音楽隊は「軍艦マーチ」だ。圧巻は中国の演奏員がコードレスマイクをにぎって観客のそばまで来て、日本語で「四季の歌」を歌った。「指揮の歌」ではないよ。さすがは「外交スター艦」と言われるだけの事はある。お見事の一言だ。

 海自はどう防衛するのかと見ていたが、指揮棒が振り下ろされたのに号砲が聞こえない。思わず固唾を呑んで辺りは静寂に包まれた。すると、かすかに聞えてきた。優しく穏やかな「千の風」のメロディーだ。

 僕は太平洋戦争が終わってからこの世に生まれてきたけれど、軍歌「海ゆかば 水漬く屍 山ゆかば 草蒸す屍」の生まれ変わりかなと思う時があった。「大君の邊にこそ死なめ かへりみはせじ」なんて時代には生まれ変わりたくないし、若い奴らにも絶対させたくもない。

 海上自衛隊の横須賀音楽隊、いい選曲をしてくれましたね。戦争で日本人や家族の為に犠牲になった若い魂は、「靖国神社なんかには居ません」と言ってる様な気がする。少しは凛とした国になるまで、もう少し千の風でオッサンと同じ、右や左のオバカサンを見守って欲しいな。

 海自の演奏にいつの間にか若い参列者で、横浜山手中華学校の華僑の生徒達から歌声が広がった。嬉しくなったよ。しかし、年配の参列者の殆どは、寒いのか中国大使館の手配した車内で、弁当が配られるの待っていたようだった。若い日中の世代に思いを馳せて埠頭を後にした。朝方の街宣車の声も聞えない。往時に比べたら大分静になった、そりゃそうだろう。英霊や陛下をオマンマの種にしたらアカンよな。

 オッサンにはナーンモ主張らしきモノが無いから、自衛隊補給艦、空母、外国ミサイル艦や万景峰号の出入も気にもならない。

 さて、そろそろ師走だな。来年こそ七福神の乗った宝船が、七つの海を越えて安芸の宮島か、我が家の玄関に入港して欲しいもんだな。これは気になるし、切実だよ。

(完)