第24話 少数民族の共生とチベット動乱(2)

2008.03.26

不信心のおねだり人生のオッサンと、魂はチーッとばかり近いはずだ。

 暴動が飛び火した青藏高原は、少数民族が先住している自治州や地区も多い。その内でも青海省は自治名を冠する行政区画がほとんどで、面積で言えば省の97%位もあり、もう青海チベット自治区と言っても可笑しくない。現在は3%くらいの中枢地に、省人口の半数以上の漢族(支配民族)が居住している。

 多民族国家の中国では、少数(55種)民族というのは先住民族の事だ。同じ多民族国家アメリカは先住のインディアン以外はメイフラワー号より後から来た、マイノリティー民族だ。

 中国大陸の長江や黄河流域には、有史以前から人類が営んでいた。新中国の建国は米国よりずっと新しいから、歴史のある青蔵高原の民族、領土の来歴は複雑だ。ぼくは長いこと日本は、アイヌや琉球も縄文、弥生もひっくるめて、単純に日本民族だと思っていた。なかなか日本人が理解するのは難しい風土だろうと思う。

 こんは時には「穴入亭師匠」の例の「ヨタバの一席」を聞いてみますか。それでは師匠どうぞ。

 『死者が出るくらいなら少数民族のゾーンには、しばらく木戸銭をくれる観光客以外の漢族やよそ者は、立ち入り禁止にしたらどうだい。チベット民族は世界遺産にしたらいいんだよ。

 中国政府が自治を認めている地域に、漢人が5割になるような移住は、幾らなんでも多過ぎないのかい?だいたい世界中どこの少数民族も、本当は臆病で純真な種族なんでがすよ。純粋だから種族のDNA保存のためには、仏教徒だって暴走しかねないぞ。そうさせちゃー可哀相だし、お仕舞いだ。

 ガタピシ長屋にお武家さんが大勢引っ越して来りゃ、信心深いご隠居や熊さんも、お気楽な与太郎だって、しきたりが違うんだから落ち着かないだろう。ここん処はさ、1人っ子政策の英断をした偉い国だから、お武家さんの流入制限ぐらいは朝飯前でがんしょ。

 でも教育や能力のあるお武家さんが来ないと、長屋の経済発展が遅れるから新しい股引は当分お預けだな。その方がハっぁん達の人生時間に会うかも知れないが、おっかぁ達は芝居小屋にも行きたいとせがむかな。どだいソリの合わない文明や文化をごちゃ混ぜにし、バター茶のように美味くなるのかい?あたしゃ知らないよ。』また話しが滑ったようですね。ハイ、師匠ありがとうさん?でした。

 ぼくはチベット仏教を知らない。アメリカ先住民のように黒々とした髪と、痩身にしわの多い赤銅色の顔で「マニ車」を廻し、「五体投地」をする彼らが、いかなる生活を望んでいるかは知る由も無い。

 この高原のいたる所に、路地裏露天のボロ机1つの歯医者にさえ、掛かれぬ人達が大勢いる。祈りを捧げる真剣な眼差しは、厳しい現世での経済的な幸せを願っているようにも見える。

 過酷な自然に生きる民は仏を求め、物心とも安寧な人生を送りたいのだろう。そこは不信心のおねだり人生のオッサンと、魂はチーッとばかり近いはずだ。

 視察の帰路にダライ・ラマ14世も修行したと言われる、チベット仏教最大宗派のタール寺を訪れた。地元の手配で運よく若い活仏、ゲルグ派第9世活仏のホトクト師に目通りが叶った。日本に訪れた事のある、穏やかで親切な師は、チベット仏教と環境を説いてくれた。

 帰国後しばらくして日本の緑化交流基金から、日・中青年合作の青海省海南蔵(チベット)族自治州の、黄河源流植林プロジェクトの承認が下りていた。今では日、韓、漢、蔵族の若人が植えた、黄河源流斜面の苗木が厳しい環境に耐え、樹々が枝を伸ばしていると聞いている。

 天台大師は「源遠ければ流れ長し」と説いたそうだ。日本やアジア、ユーラシアの文明に大きな影響を与えた、黄河文明の源は「源清ければ流れ清し」の瀬戸際だ。世界はダライ・ラマ師や胡錦涛主席の叡智の対話に期待をしている。東洋の知恵を見せて欲しいな。

 ところで、オリンピックが終わったらお小遣い貯めて、高山病の責任は持てないけどオッサンと一緒に物見遊山に行ってみませんか。

(完)